GP JOURNAL

フラワーデザイナー 山上樹一「夢心地の世界のセルフブランディング」

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こちらの要約文はAIによって生成されたものであり、情報の正確性を保証するものではありません。

お花が好きな恋人

三戸:
お花の仕事を始めたのはおいくつの時だったんですか?

山上:
大学卒業して旅行業界に勤めていたんです。
それで、30歳のときに会社を辞めて花屋になろうと。
もう周囲は猛反対でしたね。

三戸:
18年くらい前ですね。

山上:
そうですね。辞めて最初はアメリカへ行ったんですけど、
お花といえばヨーロッパだろうと思って、オランダ、ドイツ、ベルギー、フランス、イギリスのお花屋さんを見て回って、最終的にパリにまた戻って、
お花屋さんで働かせてもらいながら約1年間学校に行って、
日本に帰ってきてからは二子玉川のお花屋さんで
2年半丁稚奉公みたいなことを住み込みでやって、それで独立しました。

※パリで修行時代の山上さん。

三戸:
何でお花だったんですか。

山上:
よく聞かれるんですけど、当時付き合っていた彼女がお花好きだったんです。
彼女は国際線のスチュワーデスで、海外のステイの時なんかには、
ホテルに行く前に必ずお花買って、
フロントで花瓶を借りてお花を飾ったりするような子だったんですよ。
おしゃれだな、と思って。

三戸:
ちょっとレベルの高いお花好きですね。

山上:
素敵ですよね。二人とも気持ちのいい空間が好きだったから、
自分が住んでいるお部屋とかも、やっぱりこだわっていました。
そこにグリーンがあったりお花があることもとても好きで。
でも結局、振られちゃって。
もうサラリーマンでバリバリ稼いでもしょうがないし、
「俺、花屋になろう」って思ったのがきっかけなんですよ。

三戸:
ずいぶんスパっと決断されたんですね。

山上:
旅行業界にいた時代ね、
お客さんから「ありがとう」って言われることってけっこうあったんです。
「すごく楽しかった、ありがとう」と。
そういう仕事っていいなと思ってて。お花屋さんも「ありがとう」って言われる仕事ですよね。

三戸:
そうですね。

山上:
会社を辞めるまではお金持ちになろうとか、セレブになりたいとか、
青年実業家とか、そんなイメージを目指してたんだけど、
もうそういうのはやめて、僕と犬と二人でかわいらしいお花屋さんをやろうと思ったんですよね。
ちなみに二子玉川で住み込み修行しているときおのお給料は7万円でした(笑)

三戸:
安い!

虎視眈々と

山上:
実際に花屋を開いて、家賃や従業員の給料が増えてくると、
一般のお客さんってそんなにしょっちゅう花を買いに来るわけじゃないってことに気が付くんです。
だから、例えばデパートとかスーパーでのチェーン展開を狙ったこともあります。
でもやっぱりチェーンであっても小売だけではやっていけないなと。
となるとウエディングをやんなくちゃ駄目だと思ったんですね。
ただ、ウェディング業界も実は厳しくて、ホテルや結婚式場は、
高いパーセンテージの契約料が発生するんです。
その状況も学んだときに、これは自分たちから営業に行くんじゃなくて、
頼まれるようにならなくてはダメだ、と。
で、虎視眈々とタイミングをうかがっていたころに、
たまたま大きなブランドさんのパーティーをやらせていただく機会がありまして。
テレビの取材が入って、“独身イケメンフラワーデザイナー”として取り上げられたことで、
バーンともてはやされてるようになって、テレビ番組にも呼ばれるようになりました。

三戸:
なるほど。

山上:
すると、地方の結婚式場とかホテルから、
ぜひうちに入ってくださいと頼まれるようになりました。
自分が営業に行くのではなく、向こうから頼まれれば保証金の割合も優位に立てる。それこそが狙っていたことだったんです。

三戸:
山上さんがブランドになったんですね。

磨くのはコーディネートの視点

三戸:
先ほど「虎視眈々と」とおっしゃっていましたけど、
そういうときに磨くものというのは、やっぱりお花の腕なんですか。

山上:
違うと思います。僕は、スタートが遅かったですから、
キャリアでは勝負できないし、上手にお花をつくれる人間は、世の中には山ほどいるんです。
ただ違うのはコーディネーター視点なんですよ。
例えば、綾瀬はるかちゃんのイメージの色と杉本彩ちゃんの色は違いますよね。
ブランドにしても、ブルガリとティファニーでは、背景のカラーや雰囲気はもちろん違います。
それを理解した上で、その人や会社のブランドに合わせた表現が僕にはできる。
旅行業界時代の海外経験がものを言っているかもしれませんね。

三戸:
蓄積されているものが違うんですね。

山上:
今でもニューヨークやパリには毎年行って、
時代の感覚みたいなものを常に磨くようにしています。
僕らの業界では、海外の話題のホテルって、みんな気になっていて話によく出てくるんですよ。
今でも新しいホテルがオープンすれば必ず見に行ってチェックしてるから、
打ち合わせのときに、「あのホテルみたいな感じで」という話題がでても、
ああ、あんな感じですねとすぐに対応できます。
何だろうな…人って同じような感覚を共有している人にお仕事を依頼したくなるんですよね。

三戸:
大きな武器ですよね。

山上:
それは自信があります。
たぶんフラワー業界では一番だと思っているんですよ。

三戸:
無理されているわけではなく、新しい事象がお好きなんですよね?

山上:
僕ね、好奇心がすごく旺盛なんです。
例えば今でも、海外に呼ばれてなんかのトラブルがあって、
急に2,3日空いたりすると、ささっと格安チケットを買って飛行機に飛び乗って、話題のホテルに泊まってみたりします。
で、パっと帰ってくるとか。お金は掛かるんですけど、勉強ですからね。

三戸:
どんな機会も逃さないという姿勢ですね。見習わなくては…。

ビジネスの感覚

山上:
今、日本国内の歴史だとか文化だとかというのを、
もう一回振り返るみたいな機運が強いと思うんです。
実際、僕も海外でパフォーマンスでお花を生け込んだりするときは、あえて着物を着たりします。
元々はヨーロッパの文化であるフラワーアレンジメントを勉強したけれど、
やっぱり日本伝統の生け花の技術なんかを武器として持ってなくては駄目だなというのはすごく痛感してます。
グローバル化している現代においては、日本人だからこその武器を持っていないといけませんね。
武器を上手に使い分けて、状況を見て、ここはこういう戦い方だな、
ここはこういう戦略でいこうと、臨機応変にやっていくのがポイントです。

三戸:
成功のカギはなんでしょう。

山上:
うーん。つまり、好きをお金に換えるってことですよね。
それって実は簡単なことで、自分のことに興味を持ってくれている人、
好いてくれる人が多ければビジネスになるんですよ。
そのためには、相手の好みを一生懸命観察して探るというのは絶対的に必要だと思います。
誰でもフラワーデザイナーを名乗ることはできるんだけど、
人から注文をいただかないと成り立たないですから。
だから、僕はオレのアートを認めてくれ!というより、
何かこう、喜んでもらえることが嬉しいという感覚ですね。

三戸:
自分本位じゃなくて、相手本位という考え方ですね。

山上:
最近大事に思っているのは、ハイエンドなものにも対応できるし、
プランタン銀座でお買い物しているOLさんたちが喜んでくれるものもちゃんと提供できるということです。

三戸:
自分の世界観を持ちつつ、あらゆるニーズにお応えするということですね。
一番難しそう。

山上:
それは自信があるんです。
もっと強気に自分のアーティスト色を出していったほうがいいのかと思ったこともありましたよ。
でもやっぱりもともとサラリーマン時代に営業をやっていたから、
相手の要望をどうしても探るんですよね。
お客様に最初の段階でいい印象を与えて希望を聞き出して安心感を感じてもらいたいんです。
“押し付ける”んじゃなくて、“汲み取る”ことでクレームも防げます。

三戸:
一見、スタートが遅いようだけど、
実はサラリーマン時代の経験が強い武器になっているということですよね。

山上:
今になって本当にそう思っています。

※サラリーマン時代の山上さん。この時代に蓄積されたたくさんの引き出しが、
のちのフラワーデザイナーになってからの大きな武器になりました。

セルフブランディング再び

山上:
お花って夢心地の世界のイメージなんです。

三戸:
みんなちょっと夢を見ているわけですものね、お花に対して。

山上:
それを生業としているなら、
人から、「素敵だね。」と言われる生活を送っていなくちゃいけないと思う。
持ち物も車もファッションも、やっぱり共感していただけるようなスタイルじゃないと駄目だということは、
僕は仕事をしながら感じました。メゾンブランドのお仕事をするときに、
いくら一生懸命やっていて格好つけていても、
軽自動車で変な格好で行ったら、絶対に仕事をいただけません。

三戸:
ご自身がもう商品の一部みたいな感じですね。

山上:
それも戦略だと思っているんです。
ゴールに向けてセルフブランディングをしていかないと、お仕事は取れません。

三戸:
なるほどなるほど。

山上:
投資もします。海の見えるところに家を借りて、
もう目の前が海!という風に改装をして、そこに友だち連れて行ったり、
従業員連れて行ったりすると、うちの親分すげえんだよ、
おしゃれなんだよみたいになるじゃないですか。

三戸:
そうですね。それもひとつの発信情報ですよね。

山上:
車も、最初のころは僕も、よくお花屋さんが使っている四角いワゴン車でやっていたわけですよ。
でもあるときすごく高いジュエリーブランドのコンペがあって、
ワゴン車で行くわけにいかないから、近くまでその車で行って、
近くの駐車場にそれ止めて、そこからタクシーで行ってみたいなこともしました。
「何だよ、山ちゃん、タクシーで来たの」「いや、寝坊しちゃってさ」みたいなかたちにして。

三戸:
それも全部戦略なんですね。

山上:
そうそう。みんなマセラティで来てたり、
フェラーリで来てたりするんですよ。
ギラギラし過ぎているものはそれはそれで嫌われたりして。
繊細な兼ね合いなんですけどね。

気持ちのいい生活

山上:
今までは「スマートだね、おしゃれだね」と言ってもらえることが、
お仕事につながるという思いでやってきました。
だけどこれからは、自分自身のための気持ちのいい生活をしたいという思いが強くなっています。
妻と2人で、素敵だな、楽しいなという生活ができたらいいかな。

三戸:
お仕事の面でも、さらなる広がりというかセカンドステージを意識されていくということですか?

山上:
そうですね。ただ、いくら景気が悪くても、
人に喜んでもらえるということをモットーにやっていくのは変わりません。
それだけは徹底しなくてはいけないというのは、変わらない強い想いですね。
お金だけを追っている人間は分かりますから。

三戸:
本当にそうですね。
どういった分野に手を広げていらっしゃるんですか?

山上:
そうですね…これからセカンドステージに突入するにあたって、
やっぱり住居だったり、インテリアだったり、空間というものに気持ちが向かいます。
例えば空き家のリノベーション。
外観とか内装を少し変えて、壁を全部グリーンウォールにしてしまったり、
床を全部芝にして穴も開けて、ゴルフのパットができるようにしたり。
ほかにはポストを全部パリ風のものに取り替えて、入り口にお庭をつくって、
お部屋の壁を全部黒板にしたり。全部、すぐに借り手がつきましたね。

三戸:
やっぱり人はそういうのを求めているんですね。

山上:
そうなんです。今の若い子たちというのは、
決してお金持ちじゃない。だけどおしゃれなところに住みたい。
何か気持ちのいい生活をしたいというのは変わらないと思うんですよ。

三戸:
より強くなっているもしれないですね。

山上:
お花やグリーンというのは、生活の中にあればやっぱり気持ちのいいものです。
住居だけではなくて、病院やブティックでも、
造園屋さんとはまた違った視点で僕がコーディネイトしたら結構引き合いがあったので、そういったものも増やしていこうと思っています。

※マンションのエントランスにしつらえた、木のオブジェ。山上さんの手になるものです。

三戸:
そういうことに関しても、やっぱり蓄積された引き出しは役に立ちますね。

山上:
そうなんです。
例えばオーナーさんが「イギリスの館みたいな部屋にしたい」と思っても、
イギリスの館がどんなものか知らなかったらできないじゃないですか。
でも僕はパパっと引き出しをあけることができます。
美容院でもブティックでも、グリーンをふんだんに取り入れる店が増えてますしね。となると僕ら、それが本業ですからね。そこは負けないです。

三戸:
そうですよね。腕の見せどころですよね。
今後のご活躍も楽しみにしています。ありがとうございました。
(終)

INTERVIEWインタビュー

公開日:

2016MAY

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