アートの革命。『包まれた凱旋門展』に迫る!
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みなさんこんにちは!GPの宮永です。
イベントを運営する上で大切なのは、世の中の風潮やトレンドを知ること。時事にも様々な種類がありますが、中でも注目をしたいのがファッションとアートです。この2つは常にトレンドの最先端として、時流を作り上げる要でもありますよね。
さて、そんな中ご紹介したいのが、現在六本木で開催されている展示”包まれた凱旋門展”です。
アートシーンの一端と侮るなかれ。これはある2人の人間の“情熱”が大きな渦となり、たくさんの人々の心を動かした出来事。何が人々の心を突き動かすのか、それを美しく語ってくれる出来事でもあったんです。
包まれた凱旋門とは
2022年6月13日から2023年2月12日まで六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催されている企画展「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」。今回のテーマはこの“包まれた凱旋門”がいかにしてムーブメントとなったのか、です。
といっても、そもそもこの“包まれた凱旋門”がどんなものなのかわからないですよね?まずはそこからお話ししていきましょう!
「包まれた凱旋門」とは、エトワール凱旋門が16日間にわたり行ったプロジェクト。エトワール凱旋門といえばシャンゼリゼにある、エッフェル塔と並びパリを代表するアイコニックな存在ですよね。
このエトワール凱旋門を、銀色のコーティングが施され再生可能な青い布2万5000平米と、3000メートルもの赤いロープで包むというプロジェクトだったんです。「一体なぜ?」と思いますよね。それは後ほどご紹介するのですが……これ、ものすっっっごい大変な作業なんですよ。
だってここはパリの交通の要、シャンゼリゼ大通り。交通を止めるわけにはいかないし、布だって紐だって用意するのが大きすぎて大変!もちろん、作業するスタッフの数だって数え切れないほど発生するんです。『包む』という考えそのものはシンプルだけど、実行しようとするととにかく手がかかる!!さらに、技術的な話に加え、思想的なハードルの高さも出てきます。
というのも、凱旋門の建造は1806年。フランス軍を称えるためのモニュメントとしてナポレオンの名において作られました。その後、1836年に完成し、第一次世界大戦で命を落とした無名兵士の記念碑となるなど、歴史的なモニュメントなんですね。だからこそ、そんな国を象徴するモニュメントを布で覆うなどできるのだろうか、と言う複雑な事情もありました。
しかし実際に2021年、シャンゼリゼの凱旋門は布で覆われ、パリ市民のみならず世界中の人々が歓声を上げることとなります。そんな「包まれた凱旋門」の制作背景と実現に向けた長い道のりに焦点を当てて紹介するのが「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」なんです。
ここで気になるのが、このクリストとジャンヌ=クロードという2人の名前ですよね。
クリストとジャンヌ=クロード
1935年6月13日、同じ年の同じ日に別々の場所で生まれたクリストとジャンヌ=クロードは、1958年秋のパリで運命的に出会い、アーティストとしての活動を始めます。その後1964年にニューヨークへ渡り、二人は世界中を驚かせるプロジェクトを次々に実現させていきます。
彼らの作品は「街の日常の光景をアートが置かれた期間だけ非日常に変える」というもの。永久的ではないにせよ、普段自分たちが暮らす街を芸術に仕立て上げる。それは当時としてはかなり斬新なアイデアだったし、多くの人が平等に楽しめる美しいエンターテイメントだったんですね。
2009年にジャンヌ=クロードが逝去した後も、二人が夢見たプロジェクトの実現に向けて、クリストはひたむきに創作活動を続けていく。そしてその二人が夢見たプロジェクトのメインがこの「包まれた凱旋門」だったんです。
そんな中、2017年に彼に転機が訪れます。2人のパリでのプロジェクトを振り返る個展の企画をしていたポンピドゥーセンターからクリストへ質問がありました。「パリで新たに実現したいプロジェクトはあるか?」これに対しクリストは、「凱旋門を包むこと」と返したのです。こうして本プロジェクトは実現に向かって始動していったのです。
叶わなかった包まれた凱旋門
因みにクリストとジャンヌ=クロードは著名な芸術家でしたから、世界中に多くのファンがいました。パートナーの死を受けてもなお2人の夢の実現のために創作活動を続けるクリストを、アートシーンはもちろん多くの人は応援します。そんな中2020年にようやく“包まれた凱旋門”の実現が決定。
しかしそう、新型コロナウイルス感染拡大が始まってしまいます。延期になった本プロジェクトでしたが、残念なことにクリストは完成を見ることなく同年5月に他界してしまったのです。
民衆によって完成した包まれた凱旋門は美術史に残るピースへ
クリストの死によって終わるかと思われた企画……しかし、その後多くの賛同者が立ち上がりました。クリストが生前に残した設計プランをもとに、凱旋門を保護するために凱旋門の保護管理を担うフランス政府機関、フランス文化財センターが共同でプロジェクトを支持、進行していったんです。
エトワール広場の上に建ち、四方からの風を受ける凱旋門。なんせ200年以上も前に建てられたものですから、表面に布が当たると傷がついてしまう恐れもあります。建物から1メートルほど外側に突き出るかたちでスチールポールを張るなど、多くの注意のもと作業は進められていきました。
足場を組んだ後、2万5000平米に及ぶリサイクル可能なポリプロピレン製の布を凱旋門の屋上へクレーンを使用して持ち上げて垂らし、布を固定させるため3000メートルの赤いロープで布を縛り上げました。
この作業の過程、日に日に凱旋門が隠れて行く様子をパリの人々は静かに、しかし情熱を持って見守りました。老若男女関係なしに、本当に多くの人々がその街を象徴する凱旋門を長い時間をかけて見つめ続ける。このプロセスを見つめること自体がある種の芸術。普段は目にも止まらない設営風景ですら、パリの人なら誰もが知るクリストとジャンヌ=クロードの人生の物語、そしてパリの歴史を見つめてきた凱旋門というストーリーが交わることで芸術作品になり得るということが証明された瞬間でした。
布をまとった凱旋門の姿が公開された週末はエトワール広場の周りの車両交通が完全にストップ。一芸術作品のためにエトワール広場の車両交通がストップするなんてありえない!って思えるほど、ここ混んでるんですよ。いつも車がすごいスピードで走るパリ交通の要ですが、それすら止めてしまう“包まれた凱旋門”は本当にすごい。文句を言っている人もおらず、公開に向けてフランスのみならずヨーロッパ各地から包まれた凱旋門を見るために多くの人々が集まりました。
開催期間中、私もたくさんの投稿や記事をSNSで目撃しました。様々なコメントがありましたが、誰しもその大きさ、規模、そしてバックグラウンドのストーリーに感銘を受け、特別な瞬間に立ち会えたことを喜ぶものばかりでした。
Entrez dans les coulisses de l’Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961-2021 par @ChristoandJC ! Découvrez film complet réalisé par @leCMN autour de ce projet hors du commun pour l’#ArcDeTriomphe et #Paris 🎥 https://t.co/a6AyoagzDJ pic.twitter.com/CssZTH2Wy7
— Arc de triomphe (@ArcDeTriomphe) December 23, 2021
プロジェクトを考えたクリスト、そしてジャンヌ=クロード亡き後、実現した2人の夢。この熱い想いは世界的に有名なパリという都市を巻き込む形でアート界を揺るがしました。
日々暮らしている場所が突如として非日常の世界に包まれる。コロナで疲れたパリの人々の記憶には一層鮮やかに刻まれたんじゃないか、と思うんです。亡くなっても尚、パリの街に新しい風を吹かせた2人の芸術家。歴史に刻まれるこのプロジェクトは今後のアートのあり方を一新するかもしれません。
アートも一種のエンターテイメント。私たちも学べることがあるのではないのでしょうか。この胸熱な“包まれた凱旋門”に触れることのできる展示「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」は2023年の2月12日まで六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催されています。多くの学びをもらえる本展へ、是非遊びに行ってみては?
クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”
期間/6月13日(月)~2月12日(日)
会場/21_21 DESIGN SIGHT 東京都港区赤坂9-7-6
入場料/一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料 ※ギャラリー3は入場無料
開廊時間/10:00~19:00 ※入場は18:30まで
休廊日/火曜日、年末年始(2022年12月27日(火)〜2023年1月3日(火))