カルチャーは重要文化。パンデミック禍のドイツクラブ事情について調べてみた
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こんにちは。GPの宮永です。
今回ご紹介するのはドイツのクラブ事情について。
「なんで突然ドイツ?」って思った方もいるかと思いますが、実は『クラブといったらドイツ』といっても過言ではないんです!(ちょっと驚き?)世界で1番テクノミュージックがアツくてクラブが格好良いのって、多分ドイツなんじゃないでしょうか。
例えばベルリンのクラブ「ベルグハイン」。ここは世界中からテクノファンが訪れるアングラの聖地と言っても過言ではないクラブです。エントランスにはバウンサーと呼ばれるドアマンがいて、彼らの御目にかなった人のみ入場可能というめちゃめちゃシビアなカルチャースポット。だからはるばる日本からベルグハインのために訪れてもドアマンがNO!っていったら絶対に入れない。(私の友達は2年に渡り3度も断られました。笑)
因みにこのベルグハインは2016年にドイツ政府により文化施設に認定もされてます。
これほどまでにクラブカルチャーが発展しているドイツ。その立ち位置は日本のクラブとは全く異なります。その名の通り『カルチャー(文化)』なんですね。
ドイツにおけるクラブシーンの文化的価値
さてさて、まずはドイツにおいてのクラブシーンの文化的価値がどんなものなのか、とっても解り易い事例があるのでサクッとご説明しましょう。
2020年の6月20日、ドイツの最高裁判所の1つであるドイツ連邦税務裁判所がこんな判決を下しました。
「テクノは音楽です!」
……頭の中、?マークでいっぱいになりますよね。
これ、いったい何の話かというと『クラブで音楽を楽しむ際の税率を、その他文化的娯楽と楽しむ際の税率と同等にしましょう。テクノも文化です』って国が認めた……ということなんです。
ドイツには付加価値税というものがあります(日本での消費税みたいなものだとイメージしていただければ近いかな?)。
この付加価値税の標準は税率19%。しかし、食品などの必需品や書籍、ホテル、コンサート会場などの文化サービスを提供する企業には税率7%が適用されているのです。
つまり……ベルリンフィルのコンサートやオペラには税率7%しかかかってないのにクラブは19%もかかってしまう、という状態だったんですね。
「これっておかしくない?!」と冒頭で登場したベルグハインが原告として裁判を起こしました。そしてこの意見に裁判所は賛同。
テクノやハウスのクラブの一般的な訪問者は、音楽とDJを観るためにそこにいて、ステージで楽器を演奏するアーティストそこにいなくても、ナイトクラブはコンサートと同様のものであると認定されたのです。
ドイツのクラブは夜遊びやナンパをしに行く場所ではなく、アーティストのプレイを見に行く文化的で人々の人生を豊かにする場所なんだ……と、国が認めているんですね。
パンデミック禍のドイツではどんなことが起こっていた?
そんなクラブ先進国のドイツですが、コロナの脅威は容赦なく襲い掛かっています。では、ドイツはこのパンデミックでどういった対応をしたのでしょうか。
ベルリン市がクラブの屋外スペース利用を支援
ドイツ全土がロックダウンになった時、ベルリンのクラブカルチャーを守るためにまず動いたのがなんとベルリンの市当局。経営に苦戦しているクラブやそれ以外のナイトライフ関連ベニューに向けて「市内の屋外スペースをイベント会場として使用することを許可する」としたんですね…。格好良い…!
進んでこの運動に取り組むのはベルリン市の経済政策を統括するラモナ・ポップさん。市内のトップに手紙を出してイベント会場になり得る道路や公園、そして広場を提供するよう求め運動していたのだそう。
ベルリン市はパンデミックにおいて、ものすごい多額の支援をナイトライフ関連のクラブや施設に支給しています。そうしてなんとかクローズを免れたカルチャー発信地が一体いくつあることか。
パンデミック禍、クラブの仮の姿はダンス禁止のビアガーデン
ドイツの名だたるクラブが営業をどうしようか模索する中、ベルリンのクラブ「シンフォス」は早々にクラブの営業を一旦ストップしました。当時、ドイツ政府がレストランへの規制を緩和していたのを生かし、食事を提供できるライセンスを取得したのです。広々とした敷地で飲むドイツビールは勿論美味しいし、何より今まで開いてなかった昼の営業時間にクラブの敷地に入れるってドキドキする!ということで人気もあったようです。
その他にもアウトドアスペースを兼ね揃えるビルギット・エント・ビアがピザ屋×ビアガーデンとして営業したり、アウトブランクというクラブもアウトドアエリアを解放したり、とにかく様々なクラブがコロナの現状に合わせた形でなんとか営業をして持ちこたえているんです。
ベルリンを支える大きな産業、そしてアイデンティティであるクラブカルチャー。だからこそ、「なんとか今は持ちこたえて欲しい!」と政府は思っているでしょうし、クラブ側もコロナ禍での音楽のプレイはできなくても、収束後に向けて他の営業をしてでも頑張ろうと思っているのでしょう。一見相入れなさそうなナイトカルチャーと政府との屈強な協力体制は「テクノは文化」と表明したドイツならではなのかもしれません。
ドライブインのイベントがすごい!ドイツ×クラブカルチャー『ドライブインレイブ』
パンデミックの現状下、様々な国で実施されているエンタメトレンドと言えば“ドライブイン〇〇”ですよね。ドライブインシネマやドライブインフェスなど、車という個室の中で楽しむ娯楽のニュースは日々飛び込んできます。
その波はもちろんドイツにも来ています。結果、なんともドイツらしいドライブインエンタメが誕生。その名も「ドライブインレイブ」!
その名の通り、車に乗ったまま楽しむライブイベントです。
特に、ニーダーザクセン州のシュットルにあるクラブインデックスで開催されたドライブインレイブは規模もこだわりも段違い。会場となった駐車場にはDJブースが置かれ、ステージにはフルサウンドシステムも完備。もちろん照明もONです。しかもこのイベント、なんと3日間に渡り開催されました。会場には250台の車(入場は2人まで)が来場。
よく聞くドライブインのイベントは、インターネット経由で音楽を聞くことが多いのですが、このイベントはサウンドシステムが完璧で、ステージから聞こえる音楽を楽しむスタイル。クラブっ子であるドイツの人々たちのこだわりというか、意気込みを感じますよね。
来場者はDJの音楽に合わせて車のライトを点滅したりクラクションを鳴らしたりと、会場はとにかく大盛り上がりを見せました。
こういった試みはクラブインデックスに限らず、ドイツ各地で開催されています。クラブ大国ドイツの熱狂的なパーティーファンたちによる「パンデミックでも諦めずどうにかして音楽を楽しみたいから何かをしよう!」という熱いエネルギーを感じますよね。
リアルサウンド・リアルイベントの熱気をコロナ禍でどう楽しむか
さて、いかがだったでしょうか?
クラブカルチャーって正直ないがしろにされがちですが、こういったパンデミックの状況下こそ、どれだけ人々の心の支えとなり必要とされているかがわかります。
日本では『不要不急』の名のもとにイベントや娯楽が片っ端から自粛に陥っていますが、コロナ禍のど真ん中にあっても『カルチャーは重要文化だ』と国を挙げて公言するドイツのエンターテイメントに向かう姿勢からは我々も学べることが多々あります。
クラブカルチャーはクラブに行って音楽を楽しむ、気軽に楽しめるリアルイベント。そこには『誰かと一緒に音楽で盛り上がる』『音楽を聴くために出かける』といった、オンラインにはない楽しみがあります。音楽そのものはオンラインで聞くことができても、スピーカーから出るダイナミックな音の圧力や見知らぬ人と一体化するような感覚は代替できないもの。
しかし、ドライブインレイブのように工夫次第でリアルイベントに限りなく近いことも可能です。そしてこの試みが新しい文化を生み出していくのです。
今後、コロナのシチュエーションがどう変わるかはまだ分かりませんが、もしかしたら今までなかった新しい形でのエンタメが登場するかも? とにかく希望は全然ある! 世界のクラブ事情、常にチェックしておきたいですね!