今振り返る、リオ閉会式の演出
目次
ChatGPTで要約する
みなさんこんにちは!GPの宮永です。
本来であれば2020年に開催されていた東京オリンピックですが、新型コロナウィルスの脅威により一旦は延期に。しかしそんな中でも、今年の7月末に無事開催となりました。
東京五輪が終わった今、改めて思い出すものといえば、2016年リオで行われた東京への五輪旗授受。
当時ワクワクするようなポジティブな演出の素晴らしさに海外でも話題になり、多くの人々が4年後に開催される東京オリンピックへ向け期待で胸を膨らませました。
日本が誇るクリエイターの叡智を結集させたクリエイティビティとパフォーマンスの詰まったリオ五輪の閉会式。東京オリンピックが目前の今、改めて世界を唸らせたパフォーマンスを振り返りましょう。
東京の魅力を詰め込んだ内容に注目
テーマはなんと言っても“東京”。オリンピックといえば世界規模のビッグなお祭りです。海外の方々に「東京へ行ってみたい!」と思わせるようなワクワクするような東京らしさを!という目的が達成される……どころか、120%詰まった内容に当時は全世界が歓声を上げていました。
1964年から継承されるノスタルジックなグラフィック
リオ五輪閉会式で流れた映像のワンシーンが“亀倉雄策さんによる1964年東京五輪ポスターのオマージュ”だったということで、こちらもだいぶ話題になったかと思います。これがバン!と大画面に流れた時は、お茶の間では「おお!」と声が上がったはず。
東日本大震災への支援の感謝を人文字で
閉幕式ではフラッグハンドオーバーセレモニーと呼ばれる五輪旗を次期開催都市に引き継ぐイベントがありますよね。この時は、艶やか且つ凛とした日本の着物に身を包む小池都知事が旗の受取手を勤めました。あ、因みにこの五輪旗は4年度に次の大会が開催されるまでの間、次期開催都市が保管することになっているそうですよ。
この時メイン舞台の足元に大きく映し出されたのが「ありがとう」を意味する世界各国の言葉の数々。しかも普通に表示されたのではなく、この文字一つ一つを人文字で表現していたんですね。そしてこれは東日本大震災の被災地の学生たちが作ったというストーリーも。この地を舞台に、“日本からのありがとう”を世界中に向けて表したんです。
近未来的な東京らしい「君が代」
「攻殻機動隊っぽくてかっこいい!」
「神々の歌を思い出す」
「まさに雲間から地上に差し込む光の筋のような音の響きでした!」
世界の反応でもかなり多くの反響を得た「君が代」。君が代ってあの君が代でしょ? はい、そうなんですけど、でもあんな君が代初めて聞いた…ってくらい前衛的な君が代だったんです。
アレンジしたのは、パリを拠点に映画やドキュメンタリー、コンテンポラリーダンスなど、多岐に渡って活躍する作曲家、三宅純さん。声の力だけで挑んだ不思議な君が代は、その場にいたすべての人々の脳内をジャッジ。なんだかちょっとSFの世界をのぞいているみたい。ネオ東京感がめちゃくちゃに出ている編曲でした。
日本のビッグコンテンツである有名キャラクターが登場!
閉会式で映し出されたこちらの映像。当時様々なニュース番組でも流れ話題となりましたね。みんなが注目する仕掛けはいたるところにあるのですが、その中でも特に見逃せないのが日本を代表するキャラクターたちの登場シーン。
これはリオ会場の様子を見ても明らかですが、会場に訪れている人々かなりテンションマックス。「ドラえもんだ!」とか「パックマンだ!」などの歓声が上がります。これらの日本が生み出したキャラクターたちを世界中の人々が知っている証拠ですよね。いや、なんとなく知ってはいましたけど、日本人としてシンプルに感動。先人たちが築き上げた日本のコンテンツ力に感謝。ソフトパワーの威力を改めて再確認してしまいます。
日本の首相が扮するのは安倍マリオ
そんなかんじでほっこりと動画を鑑賞中、いきなり霞が関が…。とそこへ忙しそうな安倍元首相が!赤いボールをパスされた首相は閉会式に間に合わないと悟ったらしく、いきなりスーパーマリオに変身(もちろんここで会場盛り上がりのピーク)。
マリオは東京を代表するスポット渋谷のスクランブル交差点へ急ぐとドラえもんの力を借りて土管を設置。オリンピックの閉会式が開催されている地球の裏側のリオへ穴を掘ってジャンプ!
すると会場はいきなり暗くなり土管が登場。なんとそこからマリオの格好をした安倍首相が赤いボールを持って登場です!
投入されたのは当時の日本最先端表現技術AR
ここからメインは映像からリアルな舞台へと移します。会場を圧倒したのは当時の最先端表現技術ARを駆使したパフォーマンスの数々。光が立体的に見えるような不思議な空間は、東京五輪で行われる33種目の競技を表現したのだとか。
東京は伝統と最新技術を併せ持つ近未来的な大都市として確立していますよね。そういうイメージのバックアップがあるからこそ、こういったパフォーマンスがハマるハマる。
じわじわっと浮き出てくる東京の街とエンブレム
舞台に設置された発光する四角いフレーム。初めはパフォーマンスのための1つの道具かなくらいにしか思っていなかったのに、終盤に差し掛かると何やら動き始めたぞ…。なんと徐々に集結し五輪のエンブレムを会場に浮かび上がらせるほか、東京の町並みを作り出しました。これはすごい。
海外の反応は?
気になるのは海外の反応。当時この閉会式は世界中でどんな評価を受けたのでしょうか。
安倍晋三のサプライズ出演はニューヨーク・タイムズでも「A Morning Surprise for Japan: Shinzo Abe as Super Mario」として取り上げられましたし、イギリスの「デイリー・メール」でも「Japan upstages Brazil at the closing ceremony as their prime minister appears dressed as Super Mario in brilliant skit」ということで、海外でのツイッターの声を拾っていきますね。
それによると…
「日本の首相がリオオリンピックの閉会式にマリオの格好で登場したぞ。これは東京オリンピックの開会式が本当に待ちきれない!」
「日本の首相がマリオの格好で出てきたのは、この(リオ)オリンピックの最高の締めくくりね。」
「日本の首相がマリオの格好で出てくるなんて!」
「日本の首相が土管からマリオの格好で出てきた!信じられない!これは東京オリンピックに行くしかない!」
などなど、演出を楽しんだという声が多かったようです。
また、アメリカの「USA TODAY」では中国共産党の人民日報でさえ取り上げた!なんてことも記事になっていました。
イギリスの「JOE.co.uk」からは
「リオオリンピックでは、ローラ・トロット、ウサイン・ボルト、モハメド・ファラーなどがメダルを獲得し、素晴らしい持久力や血の滲むような努力を披露した。しかし、 最終日にすべての賞賛をさらってしまった1人の男がいる。 しかも 彼はアスリートですらないのだ。」
なんてコメントも。同じくイギリスの「GQ Magazine」でも「日本の安倍晋三首相がスーパーマリオの格好でパイプから飛び出てきた演出は、我らがエリザベス女王がジェームス・ボンドと共に2012年のロンドンオリンピックでパラシュート降下した以来の素晴らしい演出である。」なんて声も。これは嬉しい。
アメリカの「Forbes」は日本でのアニメやゲーム文化の位置づけの興味深さについて言及されていたし、とにかくこの閉会式での日本のパフォーマンスは色々な切り口から注目を浴びました。
豪華絢爛なクリエイター陣
さて、この日本の魅力を最大限に表現したパフォーマンスを作った日本を代表するトップクリエイター陣についてさらっとご紹介。
【クリエイティブ スーパーバイザー】
企業イメージや商品イメージのブランディングや多くの広告作品を手がけるクリエイティブディレクターの佐々木宏さん。本パフォーマンスにおいては企画演出をご担当。過去にはソフトバンク「白戸家シリーズ」やトヨタの「ドラえもん実写版」を手がけています。
【クリエイティブ スーパーバイザー+音楽監督】
アーティストの椎名林檎さん。彼女が起用されたときもすごく話題になりましたよね。ご自身の作品も日本らしさ満点ですから、そういう部分から親和性はやっぱりある。東京五輪のエンブレムが浮き出るときの使用曲は彼女の「望遠鏡の外の景色」という曲ですし、ネオ君が代も彼女が三宅純さんを口説き落として作ったもの。流石です。
【総合演出+演舞振付】
アーティスト「パフューム」やドラマ「逃げ恥」のダンスの振り付け師としても著名なMIKIKOさんが、総合演出と演舞振り付けをご担当されています。振り付けの中に入れられた日本特有の応援団風の振り付けや、様々なツールを使用したフレッシュな振り付けは真新しくて脳裏に焼き付きましたよね。
【クリエイティブディレクター】
データ解析技術の研究開発から国内外の商品サービス開発、キャンペーンの企画制作などテクノロジーを駆使して新しい表現を企画するプロフェショナルである菅野薫さんがクリエイティブディレクターを務めます。
【制作チーム】
制作チームには、MVやCMの演出を手がける児玉裕一さんがチーフ映像ディレクター、サントリーの宇宙人ジョーンズを手がける浜辺明弘さんがチーフアートディレクター、CGと現実世界を融合させ表現する真鍋大度さんがチーフテクニカルディレクター メディアアーティストを詰めるなどなど、とにかくもう書ききれないくらいに超豪華メンツが集結して作られているんですよこの閉会式は。
だからこんなにすごいんですよ。世界中が沸くんですよ。
終わりに
で、みなさん覚えてるかわかりませんが(色々ありすぎて)、東京オリンピックってすごい雲行き怪しかったんですよ最初から。エンブレムパクリ問題が発覚してデザイン変更したり、お金かけないって言ってたのに気がついたらめちゃくちゃお金かかってたり、東京の夏は暑すぎて死人が出るとか言われたり、東京決定も出来レースだったんじゃないかって噂されたりね。だから、日本としてはどうしてもここの閉会式で名誉回復したかった。そして出来上がったのがこの閉会式パフォーマンスです。
この圧巻のパフォーマンスで、世界は東京オリンピックに行きたい!って思ったのです。演出ってすごいですね。確かに色々あるかもしれないけれど、それでもこんなに面白いエンターテイメントが揃っている都市なんだから、きっとすごいオリンピックになるはずだと。
リオの時の映像は今見ても本当にワクワクします。まさかあの時はこんな事態になるなんて誰も思いませんでしたし、延期も無観客も想像していませんでした。人文字など、今では密になってしまうからできないパフォーマンスもあり、世界は変わってしまったと、ちょっと切なくもなりますが……
ひとつ言えるのは『最高のパフォーマンスを魅せることで、人の心はついてくる』ということ。前述の通り決定直後から色々あったのですが、それでも魅力的で惹きつけられるパフォーマンスを見せたことにより、世界からの評価は変わりました。素晴らしいパフォーマンスを、演出を見たとき、人の心は一気に動くのです。これはありとあらゆるイベントに言えること。
我々イベントプロデュース業の役割がこのプロモーションパフォーマンスに詰まっている……映像を見て、改めてそう感じるのでした。